この終わりなき片付けとの格闘記。

ニチアサ感想や日々思ったことを綴っていきます。

生き様に美学を問いかけるRPG —『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』を君はもうプレイしたか!?

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奪え、その意志で。

難易度イージーで2周クリア(二学期通常エンド&三学期トゥルーエンド)とトロフィーコンプ達成しました。総プレイ時間220時間超。無印『ペルソナ5』(以下『P5』)はプレイしてません。

学園ピカレスクジュブナイルRPGペルソナ5 ザ・ロイヤル』(以下『P5R』)は紛うことなき傑作であると自信を持って言えます。日常を彩る様々なイベント、あらゆる行動がその後の糧となるように構築されたシステム、変化を観察するのが楽しい街並み、一癖も二癖もあるキャラクターたち、人間の強さと弱さを直視させられるストーリー…どれをとっても「続きが見たい」の連続でした。

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 世界中でヒットを飛ばし数多くの賞を受賞した『P5』の良さはここで語り切れるものではないので…特に印象に残ったエピソードとその感想を綴ります。

 

※『P5』および『P5R』(三学期含む)のシナリオの大筋に触れています。重大なネタバレは排しましたが、気になる方はご注意ください。

 

(あらすじ)

主人公とその仲間たちからなる「心の怪盗団」は、人々の「認知」が歪んだ形として現れた「異世界」へ侵入する手段を偶然(?)手に入れ、そこに巣くうバケモノどもと戦うわけですが、異世界での戦いにおいて発現する己の中のもう一人の自分…それが「ペルソナ」。人間が内に秘めた理不尽に対する激情が、「アルセーヌ」、「キャプテン・キッド」といったそれぞれの「叛逆のイメージ」となって具現化し、異世界の歪んだ認知のバケモノ—「シャドウ」と戦う力になってくれます。

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猫バs…モルガナカーに乗って異世界を探索しよう

彼らの目的は、歪んだ欲望を持った「大人」の「認知」に干渉し、「オタカラ」を盗み出すこと。「オタカラ」は歪んだ欲望の「核」とも言うべきもので、それを奪うことで悪人の認知の書き換え—「改心」を行うわけです。汚い心を持った大人たちを次々に「改心」させることで、自分たちなりの「世直し」を行う。というのが大まかな流れです。

(あらすじおわり)

 

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怪盗の活躍が増えるにつれて、街の人々にも知られるようになる

怪盗団が自らに課したルールとして、改心させる「ターゲット」を決める際の「全会一致」というものがあります。怪盗団のメンバー全員の合意があった場合にのみ改心を敢行する。というものです。

この合意に至る根拠として、その大人の今までの悪事だとか被害の実態が一応は調べられるんですが、「被害額が◯◯円以上だからこいつはクロ!」とかそういう具体的なものではなく、結局はそいつが「許せない奴かどうか」を、高校生なりの知恵と正義感で判断しているわけです。

そんな作戦会議において、ある時期から「美学」という言葉が使われるようになります。

怪盗団のメンバーの多くは過去の辛い経験から心に影を背負っており、それらには得てして大人たちの悪意が絡んでいたりするわけで、「自分と同じ被害者を出さない」といった大義名分を掲げ、自分たちはあくまで怪盗、義賊なのだと。そんな彼らなりの誇りを「美学」という言葉に乗せて、時に自分たちの行いの正当性に疑問を生じたりしても、仲間全員でそれを再確認することで立ち上がってきたわけです。

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とはいえ、やってることは所詮私刑。劇中でもその点は何度も指摘されるのですが、彼らの美学とは要するにその大人を改心させることが「カッコいいかどうか」というところに着地するんだと思います。あるいは、「自分たちらしいかどうか」。ただでさえ危うい正義を、全員が怪盗団の存在を軸として、なんとか保っていたのでしょう。

そんなこんなで、メンバーが増えたり減ったりまた戻ったり、リーダーが殺されかけたりしながらも、怪盗稼業と学生生活を行き来しながら、激動の二学期を戦い抜くのでした。

 

ここまでが無印『P5』のストーリー。以下、『P5R』三学期シナリオの内容です。

 

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冬休みが終わると三学期に。三学期はシェア機能がロックされるのでスクショが撮れない。

三学期で戦う「ある人物」は、なんと大衆の集合意識の「認知」に干渉することで、誰もが苦しむことのないように現実を作り変えてしまうというとんでもない事をやってのけます。

(なぜこの人物がこのような事を成し得たのかについては作中のファンタジー要素が絡んでいるのですが、そのカラクリはストーリーで説明されるので割愛します)

この人物と対峙した際、主人公は「誰もが幸せになる現実」を「受け入れる」か「拒否する」かの選択を迫られます。私の分身である主人公は「拒否する」を選択し、戦う道を進みました。

後から知ったのですが、ここで「受け入れる」選択をすることでもう一つのエンディングにたどり着くようです。しかし私はまだその「もう一つのエンディング」を見れていません。セーブデータを巻き戻してもう一つの選択をすることが、主人公や志を同じくした仲間に申し訳ないようで気が引けるのですよね…それがゲーム体験に過ぎないことだとしても。少なくとも今はできません。しばらくしたら見るかも知らんけど。それだけ怪盗団の仲間たちには思い入れがあるし、世話になったし、感情移入しすぎた。

なぜ主人公は「拒否する」選択をしたのか?

「正しいか/間違っているか」の基準で考えてしまうと、主人公の選択は「正しい」とは言えないと思います。もとの現実には、どれだけ改心させてもキリがないほどの悪人たちや、様々の理不尽が依然として存在するわけで、そんな世界を望むことは、(たとえそれで、自分たちがこれまで大人を改心させてきた行為の意義が保てるとしても、)救えるはずだった命を、生まれるはずのなかった被害者を諦めることになるからです。

劇中で別の人物がこの選択について「道理」という言葉を用いて説明しますが、「あるべき筋道」という意味の言葉も、この過酷な選択には釣り合わないように感じます。

私は、やはり…彼の選択は「美学」に基づく物であったと信じたいのです。理不尽な現実に立ち向かうことが自分たちらしいから。その方がカッコいいから。

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私は怪盗団の仲間たちが大好きです。彼らは強い。一度は理不尽な現実に打ちのめされ、「はみ出し者」の道を歩くことになろうとも、前を向いて、自分たちにできることを精一杯頑張り、必死に生きてる。

しかし同時に人間らしい弱さも持っている。「作られた現実」を目の当たりにした彼らは、一時的に「認知」(≒記憶)が書き換えられた状態だったとはいえ、間違いなく幸せそうでした。これを「弱さ」だというのは酷な気もしますがね…。記憶が戻ったとき、彼らは「作られた現実」にいた自分を、振り切ったはずの過去を諦めきれていなかった事実を認め、再び自分を見つめなおします。

目の前の現実から逃げてはいけない。たとえ理不尽だろうと困難に立ち向かわなくてはいけない。それが正しいからではなく、その方がカッコいいから

 

この価値基準はめちゃくちゃアリだと思うんですよ。「正しいか/間違っているか」で物事を考えているとどこかでどん詰まりになる。誰かにとっての正義は、同時に他の誰かにとっての悪だったりするわけです。その「誰か」は家族だったり、恋人だったり、人生の師だったりするかもしれない。

そんな時、どんな選択をしても多分「正しくない」んですよね。「カッコよければ何したっていいのかよ!」という話ではなくて、生きる上での足がかりになる軸が、信念が、「美学」があれば、少しは、迷いが減らせるんじゃないかと。その形は人それぞれでいいと思います。他人の望みは全て叶え、期待には全霊で応えるのが美学だと考える人がいるとしたら、それはそれでカッコいいと思います。冗談や皮肉ではなく。

そして「美学」は必ずしも言語化できなくてもいいのかな、とも思います。なんとなく、自分らしいかどうか。きっと怪盗団の美学もそんな感じだったと思います。それぞれ、怪盗団入りした動機も違うわけだし。

三学期における活躍が特に目立ったキャラクターに「明智 吾郎」という男がいます。怪盗団とは立ち位置の異なるキャラクターなのですが、彼の生き様もまた自らの美学に基づき、迷いのないものでした。新キャラの芳澤さんも掘り下げられていましたが、個人的には三学期で最も輝いていたのは明智くんだったと思います。

あなたに「美学」はありますか?怪盗団の「美学」を、生き様を、あなたはカッコいいと思いますか?—『P5R』は、現実を彷徨い生きる私たちにヒントを投げかけながらも、明確な答えはプレイヤーに委ねる。そんなRPGだったのかもしれません。

 

ゲームの感想は以上です。 

 

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えらく感動したんで買ってきましたよ。モルガナ。怪盗団のメンバーはほんとにみんな大好きなんですが中でも一番好きなのがコイツです。今日はもう寝ようぜ。

 

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「我が決意の証を見よ!」

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「オソウジ完了!」MISSION ACCOMPLISHED

「ブチッ」シートとボスの椅子が付属します。悪人ヅラだけどめちゃくちゃいい奴なんですよ……

 

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ペルソナ召喚。

 

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オタカラを目の前にするとキャラが変わる可愛いやつです。

 

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それ…マダラメのオタカラか?

 

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めちゃくちゃ影響受けるタイプなので過去作買いました。さすがに最新作と比べてしまうとテンポ等には時代を感じますが、多くの部分が共通しておりそれを見つけるのが楽しい。

ある時期からRPGやるのが億劫になってしまってたんですが久しぶりに熱を取り戻すことができて嬉しいです。数多の積みたちよ、いつか崩すその日まで待っていてくれ。ペーパーマリオめちゃくちゃ楽しみ